2005年03月29日

立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」1〜9

立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
・第1回〜ライブドア、ソニー、西武鉄道報道のミッシング・リンクを読み解く
・第2回〜ニッポン放送乗っ取り劇のミッシング・リンクの在り処
・第3回〜立役者、リーマン・ブラザーズ800億円融資のシナリオ
・第4回〜時間外取引、村上ファンド、顧問弁護士解任の舞台裏
・第5回〜浮き彫りになったアメリカ金融資本“むしりとり”の構図
・第6回〜SBI登場で露呈した、ホリエモンの負け戦も「想定内」
・第7回〜フジのお家騒動から浮かび上がる「因縁の構図」
・第8回〜フジを追われた鹿内家とSBI北尾CEOを結ぶ点と線
・第9回〜巨額の資金を動かしたライブドア堀江社長の「金脈と人脈」
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立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第1回〜ライブドア、ソニー、西武鉄道報道のミッシング・リンクを読み解く
2005年03月25日 00時43分


このページは、今月の終わり(3月30日)から公開される「立花隆の『メディア ソシオ-ポリティクス』」のページのテスト版である。

実際に走り出してみないと、これが公開後どう展開していくか、今のところは、自分でもよくわからない部分があるが、とりあえず、私がどんなことをどんな風に書こうとしているのかについて、一言しておく。

これは基本的に、そのときどきで私が発言しておきたいと思ったことを、かなり自由に発信するページである。いってみれば、一種の個人的ブログと考えていただいてもよい。

(略)


ライブドア、ソニー、西武問題で問われる「会社は誰のものか」

最近の社会的事件で、何といっても興味をひかれるのは、ライブドアの堀江社長によるニッポン放送乗っ取り事件だ。それにソニーの首脳陣交代事件、西武鉄道の堤義明会長の転落などもある。このすべてがコーポレート・ガバナンスにかかわる問題で、その背景を分析していくと、資本主義システムの古くて新しい重大問題、「会社は誰のものか」という問題にぶつかる。

「会社は誰のものか」に対する単純な答えは、「会社は株主のもの」であり、ライブドアの堀江社長はいつもそれを声高に主張している。西武の堤会長に問えば、彼もそう答えるだろう。そして、「株主はオレだ。だから会社はオレのものだ。文句あるか!」と付け加えるかもしれない。しかし、そういう堤会長に文句があちこちから出てきて、文句のほうに相当の理があることがわかってきたのが、西武問題の本質ともいえる。

堀江社長もニッポン放送の乗っ取りに成功したとたん(高裁の判決勝利)、「会社は株主のもの。だからニッポン放送はオレのもの」というトーンの主張を極端にやわらげた主張に転じた。3月23日の記者会見では、ニッポン放送は社員さまのものであり、取引業者各位=スポンサーなど=のものであり、リスナーのものであるという意味のことを気持ち悪いほどの猫なで声で語っていた。

会社は株主のものにはちがいないが、株主だけのものでもないこともまた明らかである。むしろ、「会社はどこまで株主のものか?」を問うほうが正しい問いになる。その答えはさまざまあり、その多様な答えの中に現代資本主義がかかえる本質的な問題点が次々噴出してくる。その議論は簡単にはすまないので、しばらくこの評論は先送りする。


「ちょっと怪しい情報」のクレディビリティ判断

以上、三つの事件、いずれも下世話な意味で大変面白いから、その裏側とか、その後の展開の予測とか、いろいろ知りたくなる。事実、多くのメディアがそういう情報を盛んに伝えている。しかしそのようなメディアで伝えられる、「これが真相だ」式のウラ情報が、どれだけ客観的事実を伝えているかというと、かなり疑問が残る。

一般論でいうと、その辺のメディアに載るような情報は、よくて表面から皮膜一枚下どまりの情報であって、客観的事実からは相当に遠い。何か大きな社会的事件が起きて、大衆の関心がググッと盛り上がり、連日の取材合戦、報道合戦が続くという状況をさして、マスコミの業界用語は、“修羅場”という。報道記者が一人前と認められるためには、最低修羅場を二度はくぐる必要がある。

記者は修羅場の中で、他社に抜かれるとか、誤報をする、ないし、誤報寸前の誤れる思い込みに陥るといった、手痛い失敗を何度か重ねてはじめて一人前になる。そのような失敗を重ねることで、はじめて、「ちょっと怪しい情報」のクレディビリティ判断が的確にできるようになる。ニュースバリューの判断が正しくできるようになる。

なぜ手痛い失敗が必要なのかというと、人間は本性上、このような判断において簡単に「思い込みによる誤り」を犯しがちだからである。人間は何かが「そうであってほしい」と思っているときは、そうである側に有利な証拠を無意識のうちに優先的に集め、その証拠価値の評価にあたっても、自分の願望に有利な方向にバイアスをかけて判断するのである。自分ではあくまで客観的に公正に判断したつもりでも、無意識のうちに、自己に有利に資する主観的判断を下しているものである。


ミッシング・リンクの在り処を突き止める

このような「客観性を装った主観性の罠」にはまるの愚の犯しやすさは、ほとんど人間のDNAに埋め込まれているといっていいぐらい強い習性である。それから逃れるためには、何度かの手痛い失敗経験の学習効果によって、その習性に対する本能的警戒心を養うほかない。そういう学習を経て、はじめて若い報道記者は、二つの判断能力を身に付け、一人前になる。

報道記者に一番必要なのはこの二つの判断能力であって、よく世間で思われているように、いいネタをつかんでくる猟犬的臭覚能力が何よりも大切というわけではない。

そして、もう一ついうなら、いいネタをつかむために最も大切な能力は、情報の所在を嗅ぎつける能力ではなくて、いま最も大切な情報のミッシング・リンク(欠落部分)がどこであるかを突きつめて考えていく、分析能力、推論能力のほうである。足と耳を使って、情報の所在を探しだすのは、その後の作業になる。



立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第2回〜ニッポン放送乗っ取り劇のミッシング・リンクの在り処
2005年03月25日 00時43分


ニッポン放送乗っ取り事件のミッシング・リンクはどこにあるか。

事件が突如明らかになるのは、2月8日朝、東京証券取引所の通常の取引時間(8時20分から)外に、ライブドアが電子ネットワークを使って、一度に6回の取引を行い、ほとんど一瞬にして、ニッポン放送株972万株を取得したときである。

それだけのことを一瞬に行うためには、相当長期に渡る事前準備が必要だったはずだ。実際、ライブドアが買収資金を、調達するために、800億円の転換社債(CB)を発行し、それをリーマン・ブラザーズ証券(以下、リーマン・ブラザーズ)が全額引き受けるといったことが行われているが、その過程(下絵から、条件の詰めまでと、その後の具体的事務的作業)に相当の時間がかかっているはずである。


コーポレート・ファイナンスのすべてを仕切る米投資銀行

そもそも、堀江社長の最初の動機づけは何だったのか。そして、このようなスキームの絵図を描いたのは誰なのか。スキームの中には、ライブドアからリーマン・ブラザーズに4600万株という大量の株式が貸し出され、リーマン・ブラザーズは早速そのかなりの部分をカラ売りして、将来得るべき利益の最大化をはかるなどといった手のこんだことも行われている。

リーマン・ブラザーズは、JPモルガン、ゴールドマン・ザックスなどと並んで、アメリカの金融資本の中枢に位置する投資銀行の一つである。アメリカの投資銀行というのは、大企業と超大金持(スーパー・リッチ)のファイナンス・サービスのためだけに働く、アメリカ独特の銀行で、アメリカ型資本主義そのものの体現者といっていいような組織である。これに日本の銀行のイメージを重ねると全くちがう。(大衆の預金を集めて、それを企業に貸すなどということは一切やらない。することが禁じられている)。

投資銀行がするのは、企業が生まれ(設立)てから死ぬ(清算)までに必要とされるコーポレート・ファイナンスのすべてで、主として、企業が株式を発行する、あるいは債券を発行するなどして、金融市場から資金を調達するすべてのプロセスにかかわる、その相談にのり、事務手続きのすべてを引き受ける。会社の合併、乗っ取り(M&A、TOB、LOB)なども得意中の得意で、今回のスキームも基本的にはリーマン・ブラザーズが描き、すべてのプロセスを自ら仕切ったはずで、演出したのも、全体をプロデュースしたのもリーマン・ブラザーズだろう。

堀江は確かにリーマン・ブラザーズにいわれるがままのリスクを取った上で、2月8日から舞台の上で踊りだした。あとはもっぱら、舞台の上で踊っている堀江社長に照明があたっているから、あたかも、最初の最初から堀江社長のヘゲモニーでことが進んだかに見えるが、そうではあるまい。堀江社長がニッポン放送買取の意図を持ち、800億円あれば、その夢を実現できると計算して、800億円の融資案件を独自にリーマン・ブラザーズに持ち込んだとして、それをリーマン・ブラザーズがおいそれと受けるはずがない。800億円の融資はリーマン・ブラザーズにとってもそう簡単に決断できるはずがないリスク・マネーである。

ライブドアの堀江社長は、IT業界でそれなりに知られている人物だとしても、800億円を融資するに足る人物なのか。そして、ニッポン放送乗っ取りが成功するチャンスはどれぐらいあるのか。乗っ取ったあと、それによってどのような利益が生み出されるのか。そのあと、フジテレビの買収まで進むのか。ニッポン放送、フジテレビ側の対抗策にはどのようなものが考えられるのか。このプロジェクトが、どこか途中で失敗するとして、その場合、リーマン・ブラザーズの利益はどこでどのように確保できるのか。


すべては米投資銀行が描く「想定のうち」

こういったすべてのポイントが徹底的に検討されたはずで、スキームが固まるまでに、何人もの両社の弁護士が額を寄せ合って、幾晩もの徹夜を重ね、高さ何十センチにも及ぶ(あるいはすべてが電子化されていたか)検討書類、契約書類を作ったはずである。後に、フジテレビ側の対抗策が姿をあらわしてきたときに、堀江社長がビクともせずに、「すべて想定のうちです」と言い放って、「想定のうち」が流行語になった。一般には、あれを堀江社長一流のハッタリ的強がりと判断した向きもあったようだが、そうではあるまい。リーマン・ブラザーズが、あれだけ特異なスキームのもとに、あれだけ巨額なリスク・マネーを動かした背景では、それこそ徹底的な起きうるあらゆる事態を想定しての検討が行われたはずだから、本当にその程度のことは想定のうちだったのだ。

ただし、念のためにいっておくと、堀江社長は大変にハッタリが強い人で、自分でもそれを自著の中で認めている。たとえば、堀江社長が最初に仲間数人と作った会社は、ホームページの制作請負会社で、その営業を堀江社長がやった。当時、堀江社長も仲間も技術的なことがそんなによくわかっていなかったので、社外の人間に高額の謝金(社内の誰よりも高い給料)を払って技術顧問になってもらっていた。

しかし、社外では技術を売りにする会社として通っていたので、クライアントから、「きみの会社ではこういうことができるか?」と問われることがよくあった。すると堀江社長は、問いの意味すらよくわからなくても、必ず「もちろんできます」と二つ返事で答えて、あわてて技術顧問のところに駆け込み、どうやればそれができるかを教えてもらい、それから徹夜作業になっても、頼まれたことを実現して、翌日、「わが社の技術陣ならこの程度のことは朝飯前です」という風を装ったのだという。

「三つ子の魂百まで」だから、堀江社長のこういうハッタリ部分が今でも堀江社長の言動の中にあるはずだが、どこがハッタリなのかは今では判定しがたくなっている。

さて、話を戻すと、本当のミッシング・リンクは、このような具体的なフィージビリティスタディが始まる以前のところにあると思う。

堀江社長の最初の動機づけはどこでどう生まれたのか。そして、リーマン・ブラザーズに話が持ち込まれる以前の段階での、最初の絵図を描いたのは誰か。そして堀江社長とリーマン・ブラザーズを結びつけたのは誰か。リーマン・ブラザーズ側はどのような計算のもとにこの話にのったのか。



立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第3回〜立役者、リーマン・ブラザーズ800億円融資のシナリオ
2005年03月25日 00時43分


ミッシング・リンクの最も根源的な部分の真相は、将来にわたって、そう簡単に明るみに出てくることはないだろうが、2月8日に舞台の幕が上がり、いま我々が目にしているドラマが始まったときには、基本的なシナリオはできていたのだ。

ところどころことの進行に即応してアドリブで演じられるべき空白部分はあったろうが、あらゆる展開に備えて、ケースワーク別のシミュレーションが徹底的に行われ、これでいけるとなったところで、舞台の幕があがったはずである。


シミュレーションとリアルのはざまで高揚した堀江社長

とはいっても、シミュレーションと、リアルは違う。本当にリアルにことが進行しはじめるまで、堀江社長もドキドキだったようだ。

堀江社長のその前後のブログをまとめて最近出版された「堀江本」(ゴマブックス)では、二月八日の「そのとき」を次のように記述している。


「2005年2月8日(火)、朝6時に起床。朝一の取締役会でCB(37)発行を決議する。これまでの人生で一番大きな意思決定をした瞬間かもしれない。これまでの人生を賭けた勝負になるかもしれない。
その後、同じビルにあるリーマン・ブラザーズ証券で手続き等を行い、結果としてニッポン放送の35%の株式を取得した。
午後ニッポン放送を訪問。社長に業務提携の意思を伝えた後、六本木ヒルズのなかにあるアカデミーヒルズで記者会見を行った。」

「人生で一番大きな意思決定」

「これまでの人生を賭けた勝負」

というところに、堀江社長の高揚した気持ちがよくうかがえる。

この後のほうの記述で、

「(2月17日)その後某投資銀行とミーティング。続いて某社社長が来社。新規プロジェクトについて。ものづくりの交渉は楽しいねぇ。」

「(2月18日)そして某投資銀行来社。ためになるお話。そしてまた面接、またまた投資銀行とミーティング。」

などの記述があり、最近堀江社長が複数の米投資銀行と大変親しい関係に入っていることがうかがえる。


オン・ザ・エッヂ時代に味わった日本の証券会社への失望

そもそも堀江社長と米系資本との関係がどのあたりから始まったのかというと、かなり古い(といっても数年前だが)。堀江社長が初めて証券市場に自社(ライブドアの前身「オン・ザ・エッヂ」)を上場したときには、日本の証券会社P社の世話になったが、そのサポートの仕方に甚だしい不満を持った。

「堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方」(ソフトバンク)によると、こうだ。

「P証券との間では公開価格をめぐって土壇場まで争った。(略)
わが社でIPO(新規株式公開)を担当しているのはCFOの宮内だったが、彼は当時、顔を真っ赤にしてはP証券の公開引受部長と大げんかを繰り返していた。
しかし最もひどかったのは、上場後の対応だった。(略)
P証券は、このあたりのサポートは非常に不十分だった。(略)」

「そんな不満もあって、上場後にP証券との取引を解消し、最初に話のあったM証券に乗り換えた。だがM証券と付き合って分かったのは、この会社の担当者は、『自分のことしか考えていない』ということだった。担当した会社と一緒に自分も成長していこうなんてことは、これっぽっちも考えていなかった。担当者は、目前の利益を上げることにしか興味がながったのである。そんなことに落胆し、その後再び証券会社を乗り換えて、現在は外資系証券と取引している。
さすがに外資系の証券会社は非常にアグレッシブだった。大きなリターンを得るために、多少のリスクも顧ないという姿勢が貫かれており、P社のように中途半端に逃げ腰になることもない。今は日本株の半数近くを外国人投資家が買っている時代で、そのような状況の中ではワールドワイドな販売力を持っている外資系証券のパワーは非常に心強い。ここにきて、ようやくまともな証券会社と出合ったような気持ちだった。」


買収されて「社長も社員もみんなハッピー」

上場後のライブドア(この社名は2004年2月からだが、以下その前進も含んでライブドアと書く。正確には2000年4月「オン・ザ・エッヂ」→2003年4月「エッジ」→2004年2月「ライブドア」)の株式時価総額は、最も上がったときは9000億円、最も下落したときは50億円まで下げるなど浮沈を繰り返して今日にいたっている−−現在は約3000億円。といっても、一株当たりの価格が大きく変動してきたし、株数も変動したので、このあたりの数字と同列に並べて比較できる数字ではない。これはあくまで参考資料−−その後の成長過程で、ライブドアは、同業の有望IT企業を次々と吸収合併で呑み込んでふくれ上がってきた。

「ライブドアは成長とともに、さまざまな企業を買収していった。『買収』というと悪いイメージに取る人もいるかもしれないが、そんなことはない。会社が買収されることで、その社長も社員も、みんなが幸せになれるケースというのは少なくない」
と堀江社長は「儲かる会社の作り方」に書き、同書に、「吸収されてハッピー」な体験談を幾つも収録している。



立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第4回〜時間外取引、村上ファンド、顧問弁護士解任の舞台裏
2005年03月25日 00時43分


ニッポン放送問題では、吸収したあとに、堀江社長にはそのあとニッポン放送をどうするのかのビジョンが何もないと批判されているが、堀江社長が自分のところと一緒になったほうが必ずうまくいくと自信を崩さないのは、これまで毎年次から次にM&Aを仕掛けて、それがほぼうまくいってきたという実績があるからだろう。

ここで、ほぼうまくいっていきたとしか書かないのは、失敗例もあるからだ。買収の歴史に関しては、「儲かる会社の作り方」の巻末資料がいいが、その後の買収についてと、失敗例に関しては、3月24日付け日経新聞の記事「買収後問われる経営」が情報量が多くていい。ここでは以下、あまり詳しくは書かない。


バリュークリック買収劇でみせたアメリカ流TOBの手腕

吸収合併した相手には、社名まで吸収してしまったプロバイダー会社、「ライブドア」の他に、アスキーの電子商取引部門「アスキーEC」、インターネット金融サービス会社「ビットキャッシュ」、インターネット広告会社「バリュークリックジャパン」などがある。

米事業法人の子会社であるバリュークリックジャパンの場合は、ライブドアの幹事証券会社となった外資系証券会社の支援を得てだろうが米国本社が持っていた51%の株を、株式公開買い付け(TOB)で堀江が全株買い取るというアメリカ流のビジネス手法を用いている。このような直接的買収ビジネスを通じてM&A、TOBは堀江の得意業となっており(04年だけで14件)、その専門的実行部隊が社内ですでに育成されている。

バリュークリックジャパンの元社長、ジョナサン・ヘンドリックセン(ニュージーランド出身)は、同社のTOBが実にスムーズに素早く進行した例をあげて、堀江社長のビジネスのやり方は全くのアメリカ流だが、それは、インターネットの世界が元々アメリカ流だからだと解説し、堀江という人物の持つ資質は、ビル・ゲイツのそれに近いところがあるとまでほめちぎっている。

今回のニッポン放送乗っ取りが、このようなビジネスの積み重ねの延長上に生まれたのか(ことの進め方、人脈)というと、それはちょっと異質なものがあるような気がする。確かに、堀江社長は、アメリカ流のビジネスのやり方を身につけており、日本のIT市場でそれなりの成功を収めた将来有望な若手経営者の一人に数えられており、アメリカの投資家からもそれなりに評価されていた(モルガン・スタンレーが前から第4位の大株主に入っている)。


800億円投資のカギ握る村上ファンド

しかし、リーマン・ブラザーズがいきなり800億円投資して可と判断するほどの人物とは映っていなかったはずだ。誰かが、堀江社長とリーマン・ブラザーズを結びつけ、堀江社長に800億円投資すれば、その目論見が成功するに違いないということを解説的に紹介した人物がいるはずで、それがミッシング・リングだと思っていたら、この数日で、そこがほぼ明らかになってきた。「週刊現代」の「ホリエモン『影の指南』の大笑い」という記事は、次のような外資系証券会社の関係者の証言を紹介して、ミッシング・リングが、村上ファンドの村上世彰氏であったということを明らかにしている。

「ニッポン放送株に真っ先に目を付けたのは村上氏で、今年になってホリエモンを巻き込んだ。村上氏はゴールドマン・サックス証券(GS)と親しい。そのGSをホリエモンに紹介したのも村上氏。GSはニッポン放送のM&Aのシナリオをホリエモンに提供し、後にリーマン・ブラザーズ証券がシナリオを引き継いだ。つまり今回の買収劇の影の立て役者は村上氏なんです」

村上氏は、堀江社長が2月8日の東証の取引開始後わずか30分の間のうちに6件の巨額時間外取引を成立させて、ニッポン放送の株式の35%を一挙に抑えた電撃的ドラマが始まったときからささやかれていた影の人物で、この証言に近い話が他のメディアからももれてきているから、ことの真相は大筋こんなところなのだろう。堀江社長がその日に買い集めた株式は、村上氏の持っていた株式プラス、おそらくリーマン・ブラザーズ経由で話が詰められた何人かの大株主(米法人もいた)の株で、この30分間での一挙取引こそ、事前に練りに練られたシナリオだったわけだ。


事前に練りに寝られた時間外取引のシナリオ

このような取引が許される「時間外の時間」というのは、たった30分間しかないから、この取引は事前にできあがっていた完全シナリオに沿ってササッと行われたと考えられる。しかし、このような巨大取引が事前の談合の上でなされたとすると、証券取引上のルール違反となるから、関係者は、事前の談合があったとは口がさけても言えない。

それなのに、堀江は、3月3日に外人記者クラブに招かれて質問を受けたとき、思わず村上と事前に会ったことを認めてしまっている(談合したことまでは認めていない)。それを知った堀江の顧問弁護士であった猪木俊宏弁護士(後に突然辞任した)は、堀江の「しゃべりすぎ」を厳しくたしなめたといわれるが、それは、このルール違反の事実が明るみに出ることを恐れたからだろう(そのような違反行為が行われるのを弁護士が知っていて、それを止めなかったとすると、弁護士の責任問題になり、下手をすると違法行為を使そうしたとして、弁護士資格が問われることになりかねない)。そして、これは、関係者がとことんシラを切り通せばこれ以上の問題にされることはないだろうが、同時に同じ理由で、これ以上真相が明らかにされることもないだろう。

ここは、ウラの事実関係をあくまで明るみに出して、それを糾弾しようとする場ではないから、この問題のこれ以上の追及はやめて、むしろ、この問題の背景にあるもっと大きな事実に目を向けておこう。

それはこの問題で、決して明るみに出ることなく、背景の薄暗がりの中にひっそり身を沈めているリーマン・ブラザーズという影の主役の存在である。



立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第5回〜浮き彫りになったアメリカ金融資本“むしりとり”の構図
2005年03月25日 00時43分


この一連のできごとで、誰が一番儲けたかというと、それは文句なしにリーマン・ブラザーズである。リーマン・ブラザーズの利益は、二つのルートから生み出される。一つは堀江社長に用立てた800億円の資金の金利(それがどのような約定になっているか確かなところはわからないが、相当な高金利と推定してまちがいないだろう)である。

もう一つは、堀江社長から譲り受けた膨大なライブドア株を市場でカラ売りしては買い戻すことを繰り返すことによって得られる利益である。ライブドアはニッポン放送・フジ連合軍に対してこれほどあざやかな勝利をおさめたのだから、普通に考えたら株価が市場で急騰しても不思議ではないのに、事実はそうなっていない。反対に若干ジリジリと下げてしまう局面すらあった。


リーマンのカラ売りが作りだす“巨大ブラックホール”

事実問題としては、ライブドア株に相当の買い注文が入り、値上がり圧が一貫してかかっているのだろうが、市場の動きを見ながらリーマン・ブラザーズが手持ち株のカラ売りをずっと続けているから、結局、市場の値上がりエネルギーはリーマン・ブラザーズの巨大なカラ売りが作り出すブラックホールの穴に全部吸い取られてしまうのである。ブラックホールに吸い取られた値上がりエネルギーは、結局、リーマン・ブラザーズのカラ売り株の買い戻し操作によって、キャッシュの利益となって、同社の懐に入っていく。

カラ売りをし過ぎて株価がどんどん下がっても、それは買い戻しの時の利益を増やすだけだ。もし、市場の値上がり圧のほうが強くなって、株価が上がったりしたら、リーマン・ブラザーズは今度は転換社債を株にすることによって儲けを回収することができる。その際、リーマン・ブラザーズは株価より一割程安い価格で入手できることになっているから、転換して株をすぐ市場で売ったとしても10%の利益は保証されるわけだ。

要するに、このスキームでは、リーマン・ブラザーズはどうころんでも必ず儲かるようになっているのである。誰が考え出したのか知らないが、ほとんど天才的なスキームといっていいだろう。このスキームによって堀江社長がむしり取られる(株価上昇で堀江社長に入ったはずの利益は全部リーマン・ブラザーズの懐に入ってしまった。堀江社長はライブドアの株の大株主だから、その失った利益=リーマン・ブラザーズに与えた利益はとてつもない巨額なものになっているはず)とともに、勝ち組の堀江社長に乗って一儲けしようと、市場でライブドア株に手を出した人たちも皆リーマン・ブラザーズにむしりとられることになる(ライブドア株を買っても期待した利益は全く得られず、買いのエネルギーは全部、ブラックホールを経由してリーマン・ブラザーズの懐に入っていく)。


リーマン以外の全当事者が損するスキーム

これは知れば知るほど呆れたスキームで、堀江社長も含めて、リーマン・ブラザーズ以外の全当事者が損する一方のスキームである。目はしがきき、これまではあらゆる場面で巧妙なビジネスをやってきた堀江社長がなぜこんなバカげたスキームにのったのかと不思議な不思議な気がするかもしれないが、実は堀江社長にはこのスキームに乗る以外、他に資金調達の方法がなかったのだ。

その辺の裏事情を、「WEDGE」4月号の「日本で猛威を振るい始めた日本金融軍団“ 荒稼ぎ”の極意」は、次のように解説している。

「昨年末、堀江社長は買収資金を工面しようと、内外の金融機関を走り回っていた。ライブドアの内実を知る外資が応じた金額は、100億円程度だったとされる。200億円を提示した投資銀行もあったようだが、とても足りなかった。資金不足で買収断念かと思っていた矢先に、突然話がまとまった。『外資の担当者が、この案件を持ってリーマンに移ったからだ』と関係者はいう。」

要するに、800億円という身の程知らずの一大借金(CB発行)をしなければ、堀江はこのニッポン放送乗っ取りという一大バクチを敢行することが出来ず、800億円借りるためには、このように唖然とするほど屈辱的条件のスキームを呑まなければならなかったということである。

この後、堀江社長はいったいどうなるのか。手に入れたニッポン放送を利用して、意外な成功を収める(フジ産経グループとの連携による事業拡大)可能性もないではないが、逆の可能性(フジとの連携もならず、ニッポン放送を利用しての事実拡大もならず、結局は、リーマン・ブラザーズに丸裸になるまでむしりとられてスッテンテン)も同様にあるというところだろう。


小泉改革が後押しするアメリカ金融資本一人勝ちの構図

先の「WEDGE」の記事は、これが、バブル崩壊以後、日本で続いているアメリカの金融資本による日本の富のむしりとり路線の流れの上にでてきたものであることを指摘している。要するにリップルウッドによる新生銀行再生プロジェクトでの2200億円荒稼ぎ、ゴールドマン・サックスによる三井住友支援等での1700億円荒稼ぎがいろいろあったが、そういうむしり取りの一環だということだ。

この記事は、グローバル化の波の中で、各国の金融資本が海外に出て稼ぐことが基本的に自由化されたが、その自由化(国際的金融ビッグバン)によって稼ぎまくっているのはもっぱらアメリカの金融資本であるということを指摘して、次のような数字を示している。

米国の郊外直接投資による収益率は全世界に対して、10.3%。逆に、米国以外の国からの対米直接投資の利益率は、平均で4.2%(欧州が4.5%。日本は5.0%)。要するに、アメリカ金融資本の一人勝ちなのだ。そして、特に、むしりとられ方が激しいのが日本なのだ。

先に述べたようにアメリカの対外直接投資からの平均収益率は10.3%だが、その内訳をみると対欧投資からは9.6%にとどまっているのに対して、対日投資からは、実に13.9%もの収益をあげている。これだけ日本からのむしりとられ方が異常に進んでいるというのも、いわゆる小泉改革がアメリカの利益を計るためとしか思えない方向性をもって推進されてきたからであるという。(この項、次回に続く)



■著者:立花隆(評論家・ジャーナリスト)

1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。


以上、全て以下からの転載。

nikkeibp.jp 専門家の眼
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/rep02/366527


以下は、3月31日の午前に更新。


立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第6回〜SBI登場で露呈した、ホリエモンの負け戦も「想定内」
(2005.03.30 00:42)

2005年3月30日
前回の記事をアップしてから、月刊誌の連載(文芸春秋「私の東大輪」)の仕事をこなさなければならなかったので、こちらの関係の仕事からは離れていた。

その間にニッポン放送問題では、ソフトバンクグループの投資会社ソフトバンク・インベストメント(SBI)が登場して、ニッポン放送が保有するフジテレビの株式35万株すべてを、5年間にわたって借り受けることになったという驚くべき事態の展開があった。

これによって、ニッポン放送の所有していたフジテレビ株(発行済み株式の13.88%)の議決権はすべてSBIに移るから、それを目当てにニッポン放送乗っ取りをたくらんでいたライブドアは、まさにトンビにアブラアゲをさらわれた図になり、なんのために800億円も借金してニッポン放送株を買い占めたのか、全く訳がわからないことになった。

堀江社長は平静を装っているかに見えるが、実際は茫然自失というところだろう。

3月28日も、29日も、堀江社長は記者の前に姿を現さないで、記者対応をしたのは、広報部の女性だけという事態が、堀江社長のショックの大きさをよく物語っている。

インターネットと親和性悪いラジオというメディア

これぞ究極のクラウン・ジュエル作戦というか、焦土作戦である。はじめの頃は、フジ・ニッポン放送グループ側の防衛作戦が論じられるとき、クラウン・ジュエル作戦(焦土作戦)の対象として話題になっていたのは、もっぱら、ニッポン放送の子会社のポニーキャニオン(売り上げがニッポン放送より大きい)を切り離すという程度のことだった。

しかし、考えてみればニッポン放送株買占めで堀江社長が最大の狙いとしていたのは、ニッポン放送でもなければ、ポニーキャニオンでもなく、ニッポン放送が持っていたフジテレビそのものの株だったのだから、それをよそに移されてしまったら、ニッポン放送を乗っ取った意味がないということになる。

もちろん堀江社長は、フジテレビ株がもっぽらの狙いでニッポン放送を乗っ取ったなどとはおくびにも出さず、ニッポン放送の本来の事業面で、ライブドアと提携してもらうのが目的だといっているが、それは口先だけであって、誰が見ても本来の狙いは、ニッポン放送が持つフジテレビの株だろう。

テレビのパワーと比較すると、いまやメディアとしてのラジオのパワーはきわめて小さなものになっている。

ラジオを日常的に聞いている人の大部分は、昼間は手を放せない仕事をしている人(よそ見をしていてはできない仕事、つまりテレビを見ていてはできない仕事)をしている人で、具体的には車の運転手、商店あるいはさまざまな労働現場でシンプルに働いている人たちであり、夜はそれに加えて、勉強をしているフリをしたい受験生などにかぎられるというのは、誰でも知っていることだ。

「国民生活時間調査」によると、いまやラジオを聞く人は、国民の15%程度しかおらず、聞く時間も一日平均20分程度でしかない。それに対して、テレビは90%以上の人が視聴し、それに費やす時間も一日平均4時間近いのである。影響力の大きさにおいて、テレビは圧倒的である。そのような比重の低下を反映して、昨年ついにラジオの広告費売り上げはインターネットの広告費売り上げを下まわってしまっている。


ライブドアのお荷物になったニッポン放送

堀江社長はこれからの時代、最も有効なメディアはインターネットであり、従来のメディアはインターネットと融合しないと生き残れない時代になったというのが持論で、ニッポン放送を乗っ取ったのも、ラジオとインターネットが結んでシナジー効果を出すのが目的といっているが、これはあんまり本気と思えない。

メディアの中でも、ラジオほどインターネットとの融合に不適当なものはないからだ。ラジオはそもそも手が放せない、目を使わなくてよい仕事をしている人の「ナガラ聴取のための」メディアだから、手と目を必要とするインターネットと組み合わせることが一番難しいメディアなのである。

そんなことは堀江社長もわかっているだろうに、ニッポン放送にとっても自分のところと組むほうが企業価値を高めるとさかんに主張し続けているのは、そう主張して裁判に勝った以上、そういい続けなければならないからそういっているだけだ。

本心はフジテレビ株を手放したニッポン放送にはほとんど魅力を感じてないはずだ。だから、これからもしばらくはニッポン放送がSBIに株を貸したことの不当性を、経営陣に追及するなどの抵抗を続けるだろうが、勝ち目がないとなったら、買い占めた株に若干の色を付けて買い戻してもらえたら、手じまうのではないか。

ニッポン放送の株を持ったまま、あくまでニッポン放送の経営に参画しようとしても、社員たちから総スカンを食らい、ニッポン放送にはこれまで労働組合がなかったのに、労働組合を結成してまで抵抗しようとしている現状を見ると、堀江社長があくまでニッポン放送に乗り込んで、経営権を握り、業務命令を次から次に連発して、抵抗する社員をライブドアとの連携に協力させようとしても、労働争議が頻発して、目的を全く達せないで終るだろう。そうなると、乗っ取ったニッポン放送もお荷物になるばかりということになるから、少しでも金になるなら手放すはずである。

勝負がついた「ライブドアvs.フジテレビ」の攻防

3月28日発売の『日経ビジネス』児玉博「堀江貴文は挑発する」の中に、乗っ取りがうまくいかなかった場合、ライブドアに経営危機が訪れるのではないかと問われて、「だって、うちは実体がないんだからさ、リスクなんてないよ」と答えたという話を読んで、ああ、この人は負け戦に終る場合をちゃんと想定しているんだなと思った。負け戦は、引き際が大切で、下手に頑張り続けるとどんどん傷を深くして、致命傷を負うことになる。堀江社長はこれまで、負け戦で下手な頑張りを続けて失敗したことも、頑張って盛り返したことも、両方の体験がある。堀江社長がいつまで頑張るかは、どちらの体験の学習効果がより強く出るかということと、ライブドアの体力がどれだけ持つかということにかかるだろうが、いずれにしてもそう長くは続くまいと私は見ている。もちろん、とんでもない妙手、奇策が出てきて大勢をひっくり返せば別だが、基本的には勝負がついたのではないか。敵対的TOBが難しい最大の理由は、この辺にある。

企業というものは結局人間の集団だから、相手の同意なしに乗っ取った場合、その業務内容がマンパワーに依存する部分が大きければ大きいほど、それを最終的成功に導くことは難しい。乗っ取ったあとに社員の協力が得られないと、その企業を活かして用いることができない。その企業活動をより高め、より多くの利潤を生み出すという乗っ取り本来の目的を達することができない。

その企業がメーカーであれば、その企業の本体部分は工場の工場設備にある。社員の協力が得られなかったら、協力しない社員のクビを全部切って、従順な社員を新規雇用ないし再雇用して、彼らの力で工場設備を動かせば、前と同じものが作れる。もちろん、そんなことをしたら、深刻な労働争議を覚悟しなければならないが、とりあえずそういうことは考えに入れずに、論をすすめると、こういう場合は、働いている人間はいくらでも代替可能であるということだ。


敵対的買収でメディアは乗っ取れない

デパート、スーパーなどの小売業も、マンパワーに依存することころが大きい職業だが、この場合もほとんど代替可能な人間の使い方しかしていないから、人を替えても同じ商売ができるし、同じ結果が期待できる。

しかし、メディアの場合は、そうはいかない。それは簡単には代替がきかない技量を持った人々の集まりである。企業の本体部分は、そのような技量の集積そのものの中にあるといってよい。つまり人を替えたら、同じものができないのである。違うものができてしまう。新聞社なら、企業の本体は印刷機にあるわけではない(いざとなったら紙面として完成したフィルムの版を全部別の印刷会社に持ち込んで、別の印刷機で刷ることだってできる)。むしろ、新聞社の本体は紙面の中身を作る取材記者群と取材した材料を料理して紙面を作っていく編集者群のほうにある。

テレビなら、スタジオ設備や、電波発信などの設備に本体があるのではなく、それらの設備を利用して、コンテンツを作りだす人々の集まり(記者、ディレクター、番組スタッフ、技術スタッフ)のほうである。

このような意味で、メディアは乗っ取りが一番難しい企業なのである。これまでも、メディアの乗っ取りあるいはその試みがなされたことは度々あるが、成功例は少ない。特に敵対的買収では成功例が少ない。いま述べたような理由で、企業の本体部分がそこに現に働いている人々のマンパワーそのものの中にあるため、企業は株主のもの(だから株式の主要部分が株主を変えたら、新しい株主のもの)という資本主義の常識が簡単には通じないからである。

もう一ついっておけば、今回起きた、SBIのようなところが突然参入してきて、そちらにニッポン放送が問題のフジテレビの株を全株貸し与えてしまうというようなことが起きたのも、敵対的なTOBがもたらした弱さといえる。

これは一種の侵略戦争に対する防衛戦争だから、戦争中の敵に対しては何でもありの原則に従って起きたことであって、もし友好的なTOBだったら、こんなことは、友に対する裏切り行為になるから、絶対起きなかっただろう。それどころか、すでにニッポン放送の社内には、次期権力者になることが確定している堀江社長に対してゴマをする連中が大挙して出現してきて、早くも終戦直後の日本のような状態(マッカーサーと占領軍に対してゴマをする連中がドドッと増えて、その後の占領政策はきわめてスムーズに進展した)になったにちがいない。

それに対して、このまま堀江社長が乗り込むと、太平洋戦争後の日本占領ではなく、イラク戦争後のイラクのような状況になる恐れが多分にあると思う。一般論として、敵対的TOBは、事後の事態収拾がむずかしいのである。



立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第7回〜フジのお家騒動から浮かび上がる「因縁の構図」
(2005.03.30 19:51)

2005年3月30日
80年代にあった朝日新聞の有名なお家騒動について考える。これは、買占め乗っ取りではなく、最大の株主であった社主の村山家が、村山家のいうこと(編集方針、営業方針など)を聞こうとしない幹部社員のクビのすげかえをはかったところからはじまった。朝日の場合、株は公開されておらず、社員と、社員OB、それに、村山家と同じように歴史的因縁があって株主になっている若干の外部株主にかぎられていた。村山家は、圧倒的な筆頭株主だったが、社員の側は、社員もOB社員も結束した(一部村山家側についた)上で、第二の社外大株主である上野家を味方につけてなんとか抵抗したが、集めた株数が多数を制するのにスレスレで(50%をこえることコンマ以下だった)、ほんのちょっとした株券の異動で逆転するため、お家騒動は長期にわたって続いた。このようなことがあったため、朝日新聞はその後内規によって、外部株主のパワーが増大しないよう厳重な縛りをかけて今日にいたっている。

大株主支配を巡る朝日と産経の社説攻撃合戦

今回のニッポン放送問題で、朝日新聞と産経新聞の間に互いに相手を社説・論説で攻撃しあうという場外乱闘があったことを知る人は少ないだろう(両紙の社説を読み比べる立場にある人はあまりいない)。

朝日新聞が社説で、今回の問題の根本には、小さなニッポン放送が、大きなフジテレビを大株主として支配するというねじれた構図になっているということがあり、そういう構図のまま株式市場に上場していたことが、そもそもの誤りだと主張した。

乗っ取り買収を一番怖れなければならない報道機関のような企業は、言論の独立性を守るために、株を外部資本に買占められたりしないよう(朝日新聞がそうしているように)、市場に株を公開しないという道を選ぶべきだと主張した。それに対して、産経新聞の側は、報道機関が外部からの攻撃で苦境におちいっているようなときは、報道機関同士互いに助け合って、共同して外部の攻撃から身を守るべく行動すべきである(産経新聞は、朝日のお家騒動のときに、社説などで村山家の行動を批判して、社員の側を支援した)。今回も、あのときと同じように、報道機関が協力しあって外敵に当たるべき時だ。そういうときに、悪いのはお前だとでもいわんばかりの主張をする朝日はまちがっていると噛み付いた。


編集権の独立を保ったまま経営危機を乗り切ったル・モンド紙

日本でこの問題が起きているのとちょうど同じときに、フランスでは、有名なル・モンド紙がやはり経営危機におちいり、外部資本の導入がどうしても必要なところまで追い込まれるという問題が起きていた。それまで、ル・モンドでは、株は社員株主会だけが持ち、外部資本を一切入れないことで編集権の独立を守ってきた。

ではどうすれば、編集権の独立を保ったまま経営危機を乗り切ることができるのか(資金不足は明らかだった)の議論が、フランスの言論界では延々続いたが、このころになってようやく、有名大手出版社など幾つかの会社が、「金は出すが口は出さない」メセナ的な資本家に止まることを条件にル・モンド株主になることが社員から認められ、ようやく経営危機を脱することができたという記事が、日本でも報じられた。

世界のどこでも、メディア世界の環境変化にもとづく経営危機と、編集権の独立を保ったまま危機を脱するためにはどうすればいいのかという問題が、議論の的になっているところなのである。

それぞれの国、それぞれのメディアで、危機の形もちがえば、とりうる方策の選択肢もちがうから、ル・モンドの例が日本のメディアの参考になるかといえばあまりならないだろう——金は出すが口は出さないという奇特な資本家が日本にそういるとは思えないし、そういう資本家が出た場合の法的保護策(税制上の優遇など)もないから、日本ではそういう奇特な志を持つ人がいても、バカバカしいほどの税金をとられるから、結局二の足をふんでしまう。

ただ、ル・モンドが参考になるのは、志がちがう人が、ただ金があるからという理由で言論機関に乗っ取りをかけてくる時、それに対して身を守ろうと思うなら、はじめから社員株主会が独占的に株を持つ制度にしてしまうのがいちばんということだ。

日本の場合は毎日新聞がそういう制度になっている。朝日も早くからそうなっていれば、あれほど見苦しいお家騒動は起きなかったろうし、フジ産経グループにしても、今回のような騒ぎが起こることはなかったわけだ。

フジ産経グループでも、小さなニッポン放送がグループ全体を支配できるという構図に問題があることは前から承知していた。だからこそ、そのねじれを解消すべく、フジがニッポン放送に対してTOBをかけ、ニッポン放送をフジの子会社にしてしまおうと計っていたのだ。

だがこのねじれた現象には、深い歴史的因縁があり、そう簡単には解消できなかったという事情もまたある。


グループ全体を支配する二重権力構造

その事情というのは、もともと、フジ産経グループの歴史はお家騒動の歴史というか、グループ内覇権の争奪戦を繰り返してきたということだ。創業者はかつて財界四天王といわれた水野成夫氏だが、そのあと覇権を確立したのは、鹿内家(信隆→春雄→宏明)だった。鹿内家がその覇権を確固たるものにするために知恵をしぼって案出したのが、小さなニッポン放送をグループの中核に置き、これにグループ各社の株を持たせて、一種の持株会社にする。鹿内家はそのニッポン放送の支配的株主となることでグループ全体を支配するという二重権力構造方式だった。

しかし、鹿内家で不幸が相次ぎ、信隆→春雄→宏明と代が変わる間に、この構造あるがために、ニッポン放送の株が遺産相続の形で鹿内ファミリーの中で受け継がれ、それが即フジ産経グループ全体の最高権力者交代になるという図式を何度も見せつけられるうちに、グループ社員のうちに、「フジ産経グループは鹿内家の私有財産か?」「フジ産経グループの支配者がいつまでも鹿内王朝の世襲制度によって決められていいのか?」という不満の声が高まっていった。

かつては、それなりにカリスマ性があった信隆氏が上にいたので、そういう声が出てもそれを簡単におさえつけることができたし、次の代の春雄氏も、父の威光の余韻の中で、それなりの指導性を発揮できた。

鹿内家追放のクーデタを指揮した日枝会長

しかし、春雄氏が急死したあと、何の心の準備もなく指導的立場(フジ産経グループ議長)についた宏明氏には、それにふさわしい指導性がなかった。それなのに地位の高さだけを背景にやたら威張るので、正嫡性がない(信隆氏の娘婿だった)こともあって、社員にはバカにされ、一挙に人望を失っていった。そしてついに社員のクーデタによってグループ外に追われるという事件が1992年に起きた。

その後、鹿内家側とクーデタを起こした社員グループ側(そのリーダーがいま話題の日枝フジテレビ会長)が、ニッポン放送の支配権をめぐって争い続けた。時の権力を握っていた社員グループ側(日枝会長側)は、その争いのもとを断つために、ニッポン放送株を上場して、大幅増資を敢行して、鹿内家の持株の支配力を奪った。こういう流れの延長上に今回の事件は起きたのである。

そして、こういう流れを頭においた上で、今回のソフトバンク・インベストメント(SBI)の登場をながめると、実は意外なもう一つの構図が見えてくる。それは、SBIの北尾吉孝・最高経営責任者(CEO)が、クーデタで追われた鹿内宏明氏の長男、鹿内隆一郎氏と以前から非常に親しい関係にあるという事実だ。



第8回〜フジを追われた鹿内家とSBI北尾CEOを結ぶ点と線(2005.03.30 20:13)

2005年3月30日
今回、ソフトバンク・インベストメント(SBI)の北尾吉孝・最高経営責任者(CEO)が登場したとき、すぐに疑われたことは、SBI(北尾CEO)はダミーで、本当の背後にいる黒幕はソフトバンクの孫正義社長ではないかという見方だった。かねて、フジテレビと孫社長は親しい関係にあり、孫社長がかねてから堀江の敵対的買収という手法に反感を持っていたところから、いずれ孫社長が「ホワイト・ナイト」として登場してくるのではという観測が前から流れていたので、ああ、やっぱりとなったわけだ。

大和証券SMBCに貸与された株式の行方

ところが、今回のフジテレビからの貸し株については、北尾社長はこれは孫社長から指示されたことではないと、また事前に孫社長に相談したことでもないとして、あくまで自分独自の発想で行動したことだといっている。孫社長もそれに合わせた発言をしている。

そうはいっても、それは両者口裏を合わせているだけで、すべては打ち合わせ済みにちがいないという見方ももちろんある。しかし、本当にこれは北尾CEOの独自行動だった(事後あるいは直前に孫社長に話を通すぐらいのことはしているだろうが)という可能性もかなりある。北尾CEOは孫社長にただ使われているというレベルの男ではなく、孫社長と張り合ってことを起こすくらいの気概を持っている男なのである。

実はつい2週間ほど前、SBIは公募増資によって500億円の自己資金を調達し、それによって、ソフトバンクの連結対象から外れ、行動の自由を確保したばかりのところだったのである。

北尾社長はもともと野村證券の出身で、企業金融、特にM&A専門家として育った。一時はイギリスのM&A専門会社に出向して重役となっていた時期もある。帰国後ソフトバンクに入り、M&Aの専門家として、ソフトバンクが急速に繰り広げた一連の有名M&A(ヤフー、日債銀、eトレードなど)を一手にやってきた。そういう実績をもとに、「M&Aを日本で一番知っている男」と自称しているが、それを誰もウソと思わないくらい実績がある。

北尾CEOがイギリスの会社に出向している間に、イギリスのオックスフォード大に留学していたのが鹿内家の跡継ぎ隆一郎氏で、彼は同大卒業後、メリル・リンチに入り、同社でM&Aの担当部署に配属になったため、北尾社長と個人的に非常に親しい仲になり、一緒に食事をしながら話し込んでいるところを何度も目撃されている。

ところで鹿内家のかつてのニッポン放送の持ち株、全株式の8.63%は、大和証券SMBCに貸与されているうちに、ライブドアの堀江社長の手に渡ることになってしまった。鹿内家はこれに不満を持ち、返却を要求したが、契約上それはできないということで、とりあえずの問題は片付いている。これはもともと貸与期間が二年と短いので、そう遠くない時期に鹿内家に返還される。北尾CEOはそのあたりのこともにらんで、隆一郎氏と親しい関係を保っているのかもしれない。

その点を重視して、北尾CEOは実は、鹿内家へのフジ産経グループ支配権の「大政奉還」を狙っているのだといううがった見方もあるようだが、私は北尾CEOはそれほどアナクロな男ではあるまいと思っている。


ライブドア堀江社長の危ない「金脈と人脈」

最近、『WiLL』(ワック・マガジンズ)という雑誌を読んでいたら、漆間巌「堀江貴文の金融と人脈」という記事にぶつかり、これが結構面白かった。いま紹介した北尾社長と鹿内隆一郎氏の奇妙に親しい関係もこの記事で知ったことだ。

それ以外にも、堀江社長の「金脈と人脈」にまつわる話が沢山書かれているが、その相当部分が、堀江社長はどうやらヤミ金融の世界につながっているらしいという話である。それが沢山の事例つきで書かれ、その背景にある奇怪な人間関係が2ページ見開きの人脈図になっていたりする。読んでいくうちに堀江社長はどうもまっとうなビジネスの世界でばかり生きてきた男ではなく、相当危ない橋も渡ってきた男でもあるらしいということが読み取れてくる。そして、今回のニッポン放送乗っ取り事件の背後でもそういう人脈が動いていたらしいことがうかがわれる。

「今回の買収劇を格闘技にたとえると、堀江社長は『選手』。M&A村上会長が『セコンド』、リーマンは『スポンサー』、そして金融業を営む黒幕Mが『興業主』といってもいい」とある。黒幕Mとは誰なのだろう。

この「WiLL」という雑誌、かつて「週刊文春」の全盛時代に編集長をつとめていた花田紀凱氏が編集する雑誌で、まだ創刊されて5号目ながら、なにかと話題になることの多い雑誌である。

花田編集長は、ロッキード事件や「共産党研究」のころ私の担当編集者だった人だからよく知っている。電話で記事の内容の真偽のほどを確かめてみた。

それというのもこの記事には、あまりに多くの、よそでは聞いたことがないブラック系の情報が詰め込まれていて、どこまで信用していいのかわからなかったからである。

ネットの裏社会に広がる“黒い噂”

すると、「漆間」というのはペンネームだが、実はインターネットの世界では、大変な情報通として知られており、本人にも会って話を聞き、あの記事に書かれていることは、一応信用していいという感触を得ているということだった。筆者に直接会った感じでは、オモテ世界のジャーナリストとは若干ちがうところもあるが、書いたものの内容の信頼性については一応信用できると見た。企業謄本など、調べるべきところは全部きちんとおさえており、いろんなことを知りすぎていてちょっと気味が悪いところはあるが、この雑誌にのせてよいと判断できる信頼性水準にあるということだった。

与えてもらったヒントを手がかりに、インターネット上の空間を検索していくと、「××××」というそれらしいページに出会った。

「26日発売のWiLLに多少書いておきました」

というくだりがあったからこれに間違いない。

--------------------------------

※ 「月刊WiLL」5月号
堀江貴文の人脈図は、以下のURLの、下の方にアップしてあります。(ヒート)

http://blog.livedoor.jp/ayaka222a/archives/17336519.html



第9回〜巨額の資金を動かしたライブドア堀江社長の「金脈と人脈」(2005.03.30 20:19)

2005年3月30日
このページの自己紹介によると、最初はある人物の個人的な趣味(意見表明)のページとして2001年2月に立ち上げた。ところが、このページの主張がユニークであったため、共鳴する者が続々あらわれて、中には手伝いたいとする者も次々出てきた。評判が評判を呼ぶようになり、協力者もふえてきて、今ではメインメンバー18名(うち情報収集担当13名、アンカーなど実務担当5名)からなる集団のページになった。内容的には、「極右的言論活動」と自称するくらい、激しく右翼的に偏ったニュアンスがこめられたページだが、情報的には、面白い話が沢山ある。それはジャーナリズム的には、ブラック系と呼ばれる情報に属する。

ブラック系というのは、総会屋、右翼、暴力団、犯罪組織につながる系統ということだが、そういう世界には必ず、何らかの悪事につながる情報を、あっちにもっていったり、こっちにもっていったりして、それなりの情報料を稼ぐ、情報屋ともいうべき連中が巣食っている。普段は彼らの情報は、ブラックの世界内部で利用する、すなわち、その情報を利用してよからぬこと(恐喝、詐欺など)をたくらむために使われているが、それがときどき、表世界の真っ当なジャーナリズム世界にも流れてくる。

ジャーナリズムの側からの取材による聞き出しによって情報が出てくる場合もあれば、ブラック側から、表世界のジャーナリズムを利用する目的で流してくる場合もある。そのあたりは、警察と情報屋の間の関係に似ている。警察がまだ事件化していない危ない事例を見つけるために聞き込みを行う場合もあるし、情報屋の側が、警察の力を利用するためにタレ込みを行う場合もある。その中には真偽不明の危ない情報が沢山あるが、時にホンモノの犯罪情報、スキャンダル情報もある。表世界のジャーナリストも、特捜検事やしかるべき部署の刑事なども、そういう情報屋からの情報をよく利用している。


ネットに潜む「ブラック系情報」と「オモテ世界」の接点

ブラック系の情報には、信頼性に乏しいいわゆるガセネタが沢山あるが、ときどきホンモノが入っている。そこから、ジャーナリストなら特ダネをつかんだり、検事や刑事なら、思わぬ犯罪の端緒をつかんで大手柄を立てたりすることもある。一例をあげると、二週間ほど前の週刊誌の記事で話題になった、日枝フジテレビ会長の豪華な邸宅は、実はお台場のフジテレビ本社建設を請け負っていた建設業者から、リベート代わりのお礼として作ってもらったものらしいという話は、明らかにこのページの情報から生まれている。

インターネットの世界には、有名な総会屋そのものが開いているページがあったりするが、このページは、そのようなホンモノのブラック情報屋のページではなく、ブラックとオモテの接点にいる人々が作っているページと思われる節が、あちこちに見られる。具体的には、どうやら、暴力団・裏社会担当の新聞記者などが情報源になっているらしい。一方では警察との独特のつながりがあるらしいこともうかがえる。といっても、

「当サイトは、ライブドアによる株取得関連の話は、外部に話す際は情報源をむちゃくちゃにして伝えていた。当然、撹乱を狙ったものだ。あっさりそれにひっかかった連中ならびに、野村證券に言われて掲示板のリンクを消しまくるヤフーなどの動きから、改めて当サイトの情報収集担当のすごさを確認した」

の記述があることでわかるように、ここに出てくる情報をそのままうのみにするのは危険である。ここにあるのは真実をそのまま伝える情報ではなくて、意図的に改変された情報だからである。

そして、もう一つ注意しておくべきことは、このページの筆者は、国粋主義的右翼で、中国人・韓国人に強い偏見を持っているため、ヤフー、ソフトバンクに対して、多分に攻撃的な内容が含まれていることである。ヤフーの掲示板にここのページへのリンクが貼られると、誰かが常時監視していて、すぐに消されてしまうのも、ヤフーがこのページに異常なまでの警戒心を持っているかららしい。

先の引用の中の「あっさり撹乱情報にひっかかった連中」というのが誰かというと、このページが解説するところでは、朝日新聞3月17日夕刊の「ライブドアが3000億円調達」という一面大見出しの記事のことらしい。そのモトになった情報は、「3000億円はオイルマネー。ゴールドマン・サックスが引き受けて、ニッポン放送株をも担保にしてLOBをかける」という某所から流されたガセネタだったという。そしてこのネタ元は、最近ボロ儲けのスキーム故に市場の猛反発を買うことになったリーマン・ブラザーズではないか、とこのページの筆者は推測している。


堀江社長とリーマンをつなぐ「黒い影」の正体

さて、先の「WiLL」の記事で名前が伏されていた黒幕だが、このページでは真偽不明なある情報を伝えている。あっさり撹乱情報にひっかかった人間にはなりたくないから、情報の骨格だけをボンヤリ伝えておくと(本当はそこには、いろいろな驚くようなことが書かれているのだが、その情報のウラがとれないので、ここではこうしておく)、要するに、ライブドアの背後に、ヤミ金融の世界の人間がいて、本当はそれが堀江社長とリーマン・ブラザーズをつないだというのである。

堀江社長がニッポン放送の株式を約50%買占めるために、どれだけの資金を必要としたか、本当のところはよくわからないが、仮に1株約5950円(フジテレビのTOB価格)の概算値(本当はそれ以上で買っているはずだが、とりあえずこうしておく)で1640万株(ニッポン放送の発行済み株式の50%とする)入手したとすると、概算975億8000万円になるから、800億円では明らかに足りない。そこで、ヤミ金融の人間からも、100億円単位の借金をしたというのである(このページを見つけた人はそこに金額も書いてあることを知るだろう)。

以上の話、いかにもありそうなストーリーに仕立てられてはいるが、どこまで信じてよいのか全くわからない。というより、話を信じさせるような手がかり論拠すらほとんど示されていないから、ここでも具体的な記述は紹介せず、その内容がヤミ金融業界の人間のからみであるというにとどめておく。

これまでも、ロッキード事件のような世をゆるがす大スキャンダルが起きたり、あるいは、世間の耳目が集中するような大事件が起きると、マスコミの周辺にはこのような、面白いけれど真偽を確かめようのないガセネタが、裏社会(?)の側から必ずドッと流れ出してくるものなのである。それは撹乱のためなのか、あるいは愉快犯的心情か、株主がやっていることなのかはわからないが、とにかくガセネタがふえる。

中には後にホンネタとわかるものもあるが、ガセネタのほうが比率はずっと多い。ブラックの世界は、基本的に魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界なのである。火傷したくなかったら、マユに半分ツバをつけて聞くにとどめておく方がいいだろう。特に、堀江社長に裏世界の人間が巨額の資金を直接用立てたという話は怪しい。これが本当なら、堀江社長がこれを返せなかった場合大変なことになる。裏金融の世界というのは、青木雄二のナニワ金融道の世界だから、それこそ、命を取るか取られるかというような恐ろしい追い込みがかけられることになる。堀江社長は若いときに、高利の借金の恐さを十分学習済みのようだから、そこまで危ない橋は渡ってないだろうと私は思っているが、先の「WiLL」の記事にあったような常識では考えられないような妙な取引が繰り返されているということが事実とすると、それは何を意味するのか、などと考えていくと、とにかく???の連続になってしまう。


野放図なTOB合戦招いた小泉改革

さて、今月の「WiLL」で、この堀江社長関連の記事より、私がなるほどと感心したのは、九段靖之助のコラム『永田町コンフィデシャル』の「日本売り渡し政権は続く」という記事だ。日本売り渡し政権とは、もちろん小泉内閣のことで、売り渡しの中心人物は竹中平蔵内閣府特命担当大臣である。

たとえば、今日の野放図なTOB合戦の道を拓いたのは竹中だという。

「日本には株の持ち合い制度があった。安定株主を集めてスクラムを組む。もって企業買収を防いだ。」

この株の持ち合い制度を竹中改革が解体したところから、企業買収時代がはじまった。竹中がそうした背景には、アメリカの指令があったという。

「日本人の多くは知らない。毎年十月、アメリカは日本政府に向けて『年次改革要望書』なるものを突きつける。『要望』と訳したのは日本側で、その実は『命令』だ。現に『要望書』の英文タイトルは『Submission』=服従だった。毎年三月、その成果をアメリカ通商代表部が連邦議会に報告する。(略)」

「第一回の『要望書』は九四年に提示された。前年のクリントン・宮澤会談の合意を根拠とする金融はもとより、産業・経済・行政・司法……日本の各分野に向けて様々な『要望=命令』を列挙した。以来、日本の『諸力イカク』は『要望書』のシナリオに沿って進められて来た。株の持ち合い禁止、時価会計、減損会計、ペイオフ……いずれもアメリカの『要望』で、これらがひたすら日本経済を混乱させて来たことは論をまたない。」

この見方、大筋正しいと思うが、この筆者がSubmissionを服従と訳すのは誤りで、外務省訳の要望のほうが、慣用上、正しい。しかし、要望をほとんど命令同然にとらえて、それに抵抗するなどの自己主張もなく、ひたすらその実現にいそしんできたのが小泉改革だという見方は正しい。

その結果、この5年間の日本がどれほどひどいことになったかを見れば、いまや改革さるべきは、小泉政権、小泉改革のほうだといえるのではないのか。(この項、次回に続く)



以上、6回から9回までのURLは以下。

http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_horiemon/

http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_kozu/

http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_tensen/

http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_brain/



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